花粉症新発見「彼らはどうやって花粉症の苦しみから開放されたのか?

2003/03/02 日本テレビ放映内容
 

現在、花粉症患者は全国で約1300万人、首都圏では4割の家庭に1人以上の患者が存在するという。東京慈恵会医科大学の遠藤朝彦博士によれば、ことしの花粉飛散量は2月までは史上2番目ですでにこれまでの平均を上回っており、しかもことしはスギ花粉が多く舞う条件を満たした"当たり年"のため、これまで花粉症ではなかった人にも急に症状が出てしまう可能性があるという。

花粉症に悩まされていたある主婦は、"あるもの"を飲んで20分ほどすると花粉症の症状が治まったという。さらには同様のケースが他にも存在することが判明した。その飲み物とは一体何なのだろうか?

日本大学薬学部の北中進教授が、知人から分析を依頼されたシジュウムと呼ばれる南米産の植物を、お茶にして1日2杯ずつ飲んでみたところ、1週間後に10年来悩んでいた重い皮膚病の状態がかなり好転したという。早速、分析を始めた北中教授は、シジュウムの多種多様な成分がアレルギー疾患に効果を示す可能性を見出した。
一方、東邦大学医学部大橋病院第二小児科の鈴木五男助教授は、皮膚炎の子供に与えていたシジュウム茶を重い花粉症で悩む母親が飲んだところ、花粉症の症状が軽減されたという話を聞いた。興味を持った鈴木助教授は、花粉症を含むアレルギー性鼻炎の患者にシジュウム茶を飲んでもらったところ、そのうちの8割以上に症状の軽減を確認したという。さらに北中教授とともに報告書を当時の厚生省へ提出、花粉症に効果を発揮する可能性がある植物として研究者の間で注目を浴びた。では、なぜシジュウムが花粉症の症状を軽減させるのか?

花粉症とは、体内で、花粉を誤って攻撃する「IgE抗体」が多く作られるために起きる症状。その「IgE抗体」を作る指令を出すのがTh2細胞である。通常Th2細胞はTh1細胞と呼ばれる細胞によって働きが抑えられており、抑えられている場合は花粉症などのアレルギー症状は発症しにくい。だが様々な要因によりTh2の働きが強くなると、IgE抗体を多く作る指令を出してしまい、花粉症などのアレルギー反応が起きやすくなってしまう。

北中教授はシジュウムに含まれるセスキテルペンという物質が2種類のTh細胞のバランスを正常に保つ効果を持つことを、マウス実験によって実証したという。つまりシジュウムを摂取すると「IgE抗体」が作られにくくなり、花粉症の症状が抑えられるというのだ。さらに北中教授によれば、シジュウムに含まれるタンニン類が、くしゃみや目のかゆみなどの症状を引き起こす炎症物質の放出を最高で約97%も防ぐこともマウス実験で確認したという。鈴木助教授によれば、市販の薬だけで花粉症の症状がおさまる人もいるが、冒頭の主婦の事例のようにシジュウムと併用した場合に、より症状が軽くなるケースが存在するという。

シジュウムを一番簡単に摂取する方法はお茶である。シジュウムは健康茶として市販されているが、選ぶ際にはシジュウム100%と表記されているものを選ぶのが望ましい。シジュウムとは元来、南米に生息するグアバの一種であるため、グアバ茶である程度代用する事も可能という。シジュウムを手に入れるには、漢方も取り扱っている薬局に問い合わせる方法がある。
分量としては、沸騰したお湯200ccに茶葉0.5g、小さじ1杯が適量、濃さは色がほんのりつく程度で充分。効き目に個人差はあるものの、効く場合は10分から30分程度でくしゃみや目のかゆみなどの軽減効果が現われ始めるという。
1日の摂取量は2杯から4杯ほど。むやみに飲み過ぎると人によっては下痢などを起こす場合もあるため適量を守る。また北中教授によると、妊婦は胎児を異物として認識しないようにTh1の働きが強くなっており、シジュウムを摂るとTh細胞の均衡が保たれる事で胎児を異物と誤認、最悪の場合は流産などの危険性も出てくるという。そのため妊娠中の方は、シジュウムの摂取は絶対に避けなければならない。

東京慈恵会医科大学の遠藤朝彦博士によれば、花粉症を抑えるためには、日常生活から気をつけることが必要だという。静電気のおきやすい化学繊維の衣服は花粉を引き寄せるためこの時期には不向きといわれてきたが、最近の研究で静電気が花粉を引き付ける力はさほど強くないことが判明した。実は化学繊維は「長繊維」と呼ばれる毛羽立ちが少ない繊維で構成され花粉がからみにくく、綿や毛などの天然繊維は「短繊維」という毛羽立ちが多い構造をもち、花粉がからんで衣服にたまりやすいのだ。そのため天然繊維よりも化学繊維の衣服を着た方が花粉の影響を抑えることができると考えられる。
また、空気中を飛び交う花粉量は時間によって大きく変化し、都心部であれば気温上昇に伴い山林などから飛散した花粉が到達する午後1時〜3時と、上昇気流で上空に巻き上げられた花粉が地上に落下する午後5時〜7時が花粉量のピークにあたる。そのため帰宅時間を7時30分頃までずらせば花粉を吸う量も少なくてすむと考えられるのだ。

花粉症で悩むある主婦は、自宅でこまめに掃除機をかけ、家族にも帰宅時は玄関先で花粉を払うように促していたという。しかし、自動花粉測定装置によって家庭の花粉量を計測したところ、特に花粉に気をつけていない家の平均値とほぼ同じ数値だった。遠藤博士によれば、掃除機は排気によって床の花粉を巻き上げるため、同時に空気清浄機を使用することで床の花粉と舞い上がった花粉の両方を取り除けると指摘する。また掃除の後に雑巾で水拭き、そして仕上げに乾拭きを行えば、より確実であるという。

さらに遠藤博士によれば、起床直後に花粉症のひどい症状が出る「モーニングアタック」は、花粉量とあまり関係なく、実は朝の起き方によるホルモンバランスが大きく関わっているという。朝スッキリと目覚めれば、自律神経のバランスが「副交感神経」優位から「交感神経」優位に切り替わり、その際、副腎から分泌される副腎皮質ホルモンが花粉症に関する免疫細胞の働きを抑えてくれる。だが寝ぼけたまま強引に起きると自律神経の切り替えがはかどらず、副腎皮質ホルモンの分泌が妨げられて、わずかな花粉にも反応、モーニングアタックが引き起こされるという。そしてモーニングアタックによって鼻粘膜が荒れると、日中の症状はよりひどくなるという悪循環に陥ってしまうというのだ。

対処法として、目覚めても頭がスッキリとする、つまり自律神経が切り替わるまで待ってから起き上がる。寝起きの悪い人は、布団の中で足首を前後に動かす運動を3〜4分行えば、ふくらはぎの筋肉がポンプの役割で全身の血流を促すため頭がスッキリしてくるという。
さらに、花粉症を根本から治療するための画期的な方法として、スギ抗原米が研究されている。2002年12月に農業生物資源研究所が遺伝子を操作することで開発したこの米は、「IgE抗体」の花粉攻撃をブロックする「IgG抗体」を作り出すため、1日80gを白米に混ぜて花粉が飛ぶ2ヵ月前から週1回食べておけば、花粉症に悩まされることはなくなるというのだ。


この「IgG抗体」を用いた治療法については、薄めた抗原を注射する減感作療法が既に実践されているが、長期通院が必要な場合もあり患者の負担は大きい。だがこのスギ抗原米であれば、ご飯を食べるだけで簡単にIgG抗体を生成できる。現在2006年の実用化を目指しており、実現すれば手軽な方法で花粉症を完全に治療できるかもしれないのである。